ショパン・ノクターン―演奏の手引き


ヨセフ・ブロッコ
ピーター・コラジオ

ショパン・ノクターン演奏の手引き



中村菊子監修

全音楽譜出版社
●音楽のお話トップへ
●ショパンピアノ奏法へ
●ピアノ教則本
●FINALEで譜を書こう
●コスマピアノコンクール
●お薦めCD&DVD
●大ピアニストのレッスン
●スタインウェイ物語
●ピアノレッスンスタジオ
≪目次≫

第一章”ノクターン”についての一般的背景

1. ”ノクターン”(夜想曲)の根源
2. ショパンのノクターン
3. エディション(版)について
4. ショパンのノクターンへの前置き
   ”2つのタイプの左手の伴奏型”
5. なぜノクターンを勉強するのか
6. ショpン究極のダンパーペダル
7. ノクターンの形式
8. メトロノーム・マーク
9. 指使い
10.作品番号のグループ分け
11.曲の中のセクション移行
12.ショパンの対位法
13.ショパンの装飾音の使い方
14、ベル・カントの影響

第2章

1. ノクターン変ロ短調(Op.9 No.1)
2. ノクターン変ホ長調(Op.9 No.2)
3. ノクターンロ長調 (Op.9 No3)
4. ノクターンヘ長調 (Op15No.1)
5. ノクターン嬰ヘ長調(Op.15 No.2)
6. ノクターント短調  (Op.15 No.3)
7. ノクターン嬰ハ短調(Op.27 No1)
8. ノクターン変ニ長調(Op27 No2)
9. ノクターンロ長調  (Op.32 No1)
10.ノクターン変イ長調(Op.32 No2)
11.ノクターント短調(Op37 No.1)
12.ノクターント長調(Op37 No.2)
13.ノクターンハ短調(Op48 No.1)
14.ノクターン嬰へ短調(Op48 No.2)
15.ノクターンへ短調(Op55 No.1)
16.ノクターン変ホ長調(Op55 No.2)
17.ノクターンロ長調(Op62 No.1)
18.ノクターンホ長調(Op62 No.2)
19.ノクターンホ短調(Op72 No.1)(遺作)
20.ノクターン嬰ハ短調(遺作)
21.ノクターンハ短調(遺作)

ピアノ教則本紹介ページ

●ピアノ奏法の基礎
●バイエルピアノ教則本

ショパンのノクターンへの前置き

      

2つのタイプの”左手の伴奏型”

ショパンのノクターンは2つの基本的な左手の伴奏型によ
って分けることができると言えましょう。左手の伴奏の横に
流れる3連音型 8/12 6/8や3連符)の音型を伴ったノクターン
と、縦割りでしっかり動く、”2拍子型”(4拍子型も
含む)の音型を伴ったノクターンがあります。ショパンにはこ
れら2つのタイプのノクターンの中で巧妙な変化にとんだ音楽
を展開しています。

ショパンは自身のレッスンにフィールドのコンチェルトとノクターンを
よく使っていたことを考えても、フィールドの「ノクターン 変ロ長調」を
しっていたに違いありません。このフィールドの作品は左手がトリプレット
で横に流れるノクターンのよい例です。

この曲とショパンの「ノクターン変ニ長調 Op.27.No2」を比べてみてください。

そこでも、左手が低い音を強拍にトリプレットの伴奏型が同じ音域を流れ動いています。

またフィールドのノクターンにもデュプレットを使った曲がありますが、その種の
伴奏型にはしっかりとした主張があります。


フィールドとショパンのこの種のノクターンには多くの類似点
が見られます。左手のパターン、音域、そして第2、第3の声部
がハーモニーとして加わってくる右手の旋律など類似点を
注意して見てください。


      

なぜノクターンを勉強するのか

ショパンのノクターンはしばしば小形式の単純な曲と思われがちですが
決してそうではありません。表面的にはどの曲も同じように見えるかも
知れません。ショパンのノクターンは、一言でいえば叙情的な旋律と
流れるように動く和声的な伴奏がついた曲ですが、どれ1つとして同じ
ように書かれたノクターンはありません。
ノクターンは、ショパンのピアノの楽器としての扱い方の
集大成ですから、まじめにピアニストを志す生徒は、全てのノクターンを
勉強しなければなりません。ショパンんの音楽要素は全て彼のノクターンの中に
異なる音域の展開、独特な和声法、多声部からなる対位法として含まれているのです。

ノクターンが必要とする指の動きや手先の技巧は、バラード、ポロネーズ、ソナタ
スケルツォ、エチュードを弾くときほどのものではありません。
ノクターンの難しさはもっと他のデリケートな奏法にあります。
第1に気を配らなければならないのは、耳であり、そして特に足なのです。